
はじめに
「うちはOJTでやっているから大丈夫」――そう考える中小企業の経営者や管理職は少なくありません。
確かにOJT(On the Job Training)は、実際の仕事を通じてスキルや知識を身につけられるため、中小企業にとってはコストもかからず即効性のある育成手法です。
しかし、OJTだけに頼ってしまうと、人材は思ったように育たず、むしろ早期離職や組織力低下の原因になりかねません。
本記事では、OJTのメリットと限界、そして中小企業が陥りやすい失敗について掘り下げていきます。
OJTのメリット
まずはOJTの良い面を整理してみましょう。
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即戦力として育てやすい
現場で実際の仕事をしながら学ぶため、実務に直結したスキルが身につきます。 -
コストが低い
外部研修や教育プログラムを導入するよりもコストが抑えられるため、資金に限りのある中小企業には有効です。 -
会社文化を伝えやすい
現場の先輩や上司から直接学ぶことで、その会社独自のやり方や価値観が浸透しやすいのも特徴です。
このように、OJT自体は人材育成の重要な手段です。しかし、それが「唯一の育成手法」になってしまうと大きなリスクを抱えることになります。
OJTの限界
OJTには、どうしても避けられない限界があります。
1. 属人的でバラつきが出る
OJTは「誰が教えるか」に大きく依存します。
優れた指導力を持つ先輩にあたれば成長も早いですが、そうでなければ知識が断片的になったり、学ぶべきポイントを見逃してしまいます。
2. 放置型になりやすい
忙しい現場では、教える側も自分の業務に追われています。
「隣で見て覚えろ」「やりながら学べ」といった放置型のOJTになりやすく、新人は孤立感や不安を抱きやすくなります。
3. 体系的な学びが欠ける
OJTはあくまで現場中心の学びであるため、知識やスキルを体系的に整理する機会が不足します。
「なんとなくできるようになったけれど、根本は理解していない」という状態に陥りやすいのです。
OJTだけに頼ると起きる問題
中小企業でよく見られる失敗例を挙げてみましょう。
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指導内容がバラバラ
A先輩とB先輩で教え方が違い、新人が混乱する。 -
成長スピードが遅い
基礎的な知識や考え方を体系的に学んでいないため、応用力が身につかず、即戦力化が遅れる。 -
早期離職につながる
「教えてもらえない」「放置されている」と感じた新人は不安を募らせ、入社1〜2年で辞めてしまうケースも多いです。 -
会社全体のレベルが上がらない
育成が属人的なままでは、社員全体のスキルが均一化されず、組織力が弱まります。
中小企業が陥りやすい失敗例
具体的なケースを紹介します。
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事例1:新人がすぐ辞める会社
ある中小企業では、入社した新人にいきなり営業同行をさせ、「見て覚えろ」と放置しました。結果、半年も経たずに新人は「成長できる気がしない」と退職してしまいました。 -
事例2:ベテラン依存で育成が止まる会社
別の企業では、育成を一人のベテラン社員に任せきりにしていました。しかし、そのベテランが退職した途端、育成のノウハウが失われ、新人は誰からも十分な指導を受けられなくなったのです。
これらは「OJTだけに頼ることの危険性」を物語っています。
結論:OJTは必要だが十分ではない
OJTは確かに中小企業にとって有効な育成方法です。しかし、それだけに依存してしまうと「人が育たない会社」になってしまいます。
重要なのは、OJTを「一部の手段」と位置づけ、仕組み・研修・フィードバック といった他の育成要素と組み合わせることです。
後編では、具体的にどのような人材育成戦略を中小企業が取るべきかを紹介します。
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